創造療法はクライアント中心主義(非指導型)アプローチをとるため、精神分析を行いません。
しかしながら、ディプロマコースでは精神分析基礎理論の講義もありました。基礎理論には、フロイトの無意識、リビドー、タナトス、クラインの対象関係論、ボルビーの愛着理論、ユングの集合無意識や元型エネルギー、アサジオリ、グロフのトランスパーソナル、ハイヤーセルフ、ウィニコットの支持的環境や移行対象、アルマースの本質(エッセンス)等々がありました。
講義を受けていた当時の私は、自分自身のプロセスと照らし合わせて、対象関係論に一番注目していたようで、自分の経験に基づく考えとして以下の点がレポートにまとめられていました。
① 両親、特に母親によりかけられた期待や価値観に応えるように自我を形成してきた。この期待や価値観は、両親もまた同様にその両親からかけられたものと、それにより彼らが負った傷を隠すために形成されたものとあるように思われる。
② 他者(社会)との関わり方において、母親に対する関わり方を使っている。
③ 自分も我が子に対して両親と類似した関わり方をしている。
④ 関係性は親子で引き継がれる傾向がある一方で、一様に繰り返されているわけではない事実を鑑み、人間の変容、進化していく可能性と希望がある。
これらの気づきから、人と関わる中で困難に思うことや感情を大きく動かされることにおいて、繰り返されるパターンを見出し、このパターンが母親との関係性を雛形としているかもしれないという仮説に基づき、母親との関係性にフォーカスした内省によりセルフワークを進めたいと思いました。これにより、過去の自分が母親に対して抱いた、当時自覚しなかった思いや感情に気付き、自分の純粋な喜びにフォーカスした新たな関係の築き方を選択していくことができるようになると期待します。
(中略)
自分のプロセスの理解を深め、自己理解と成長を助けるために、自分にとって重要な理論には、対象関係論がありました。
対象関係論の考え方は、両親、主に母親との間に構築してきた関係性を客観的な視点で捉えることで、自分が他者と繰り返している関係性のパターンに気付く助けになるという面で自分の理解を助けると考えます。そして、その関係性を超越して、真実の自分の喜びにフォーカスした新たな関係性を構築していくという面で、自分の成長を助けてくれると考えます。更に、両親に対して「父母」として期待する気持ちを超えて、彼らが経験してきた様々な背景を尊重しながら、一人の人間として理解し受け容れるという面においても、自己の成長を助けてくれると考えます。
あれから5年。「もう」5年なのか、「まだ」5年なのか分かりませんが、両親もまた、様々な設定の中で苦悩し、もがき、傷つきながらも成長してきた、自己探求する同志(魂)であったという理解に至り、その巡り合わせに感謝の気持ちが深まっていく日々です。
理論自体は癒しをもたらしてはくれませんが、自己受容のプロセスに取り組む励みになったり、客観性や希望をもたらしてはくれるのではないかな、と思いました。
癒しや自己受容は主観的な体験であって、外から与えられるものではありません。創造療法は、そんな主観的な真の体験を得るステージを提供することができます。セラピストは主役(来談者)の安心安全を確認しながらサポートする黒子です。
気軽に受けられる「おえかきトーク」を始めました。創造療法を体験してみたい方はこちらをご覧いただけると嬉しいです。